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投稿日 2015年5月16日土曜日

井戸底の様子が判りました

本日の記録


作業時間 13:30〜18:30
掘削記録 0cm(深度1,765cm) 本日は下穴の拡張のみです
開始水位 535cm(水深1,230cm)

本日は雨天のため、井戸掘りはお休みです。のはずでしたが、午後になって雨も上がり、空も明るくなってきました。と言う訳で井戸掘りへGo!! あんたも好きねー


道具と材料


・オーガ本体+延長パイプ×9+短尺90cmパイプ=1,800cm
・突き棒2号+塩ビHIVP25×200×9=1,970cm
・ポンプ式井戸掘り器
・チゼル型アースクラッシャー


掘削の状況


昨日の沈殿した堀クズを浚います。
粘土と粗砂が揚がりました。

昨日の掘り屑を浚いました

井戸底で邪魔している石を、幅75mmのチゼルで砕きましょう。
チゼルを打ち込むと、ガッチリ突き刺さりました。人力ではどうしても上がりません。持ち手パイプの保持ロープに梃子を掛けたら、ロープが断裂しました。

幅75mmチゼルが突き刺さりました
チゼルを梃子で引上げたら保持ロープが断裂しました

保持ロープを2.5mmのワイヤーロープに交換しました。断裂の原因は単管継ぎ手の角です。ワイヤーカッターと同じように、ロープを切ってしまったようです。古軍手の指先を切り取り、手首部分を単管継ぎ手に被せました。
無事、チゼルを引き抜けました。

保持ロープをワイヤーに変更して、
単管継ぎ手には軍手を付けました

井戸底が粘土でもないのに、なぜチゼルが突き刺ささったのかは不明です。石と石の隙間に挟まったのでしょうか?
突き刺さりが怖いので、動滑車は使えません。しかし、手打ちでも度々チゼルが井戸底に突き刺さります。その度に梃子で引き抜きました。
もう、コツコツ細かく手打ちを続けるしかありません。

30分程、手打ちを続けたらチゼルは突き刺ささらなくなりました。もういいかな? 力を込めてチゼルを打ち込んだら、また突き刺さりました。

重症です。梃子でも上がりません。梃子に力を込めるとHIVP25の塩ビパイプがキシキシと悲鳴をあげます。不味い、塩ビパイプのソケットが外れそう…。
チゼルには12mmのトラックロープを付けてありますが、リングが摩滅しています。予防交換で新しいロープを購入したのに、交換せずにチゼルを降ろしてしまいました。パワーウインチを使うとロープも引き千切れそうです。失敗こいた!!

いつもの作戦です。持ち手パイプを揺さぶり、細かく引張り、時には押して…。これを10回程繰り返したら、やっと引き抜けました。良かったよー。

チゼル、帰還しました

チゼルは怖くてもう使えません。苦労したチゼルですが、少しは効果があったのでしょうか? 石が砕けたか確認するため、径75mmオーガを降ろしました。
しかし、進展ありません。オーガは昨日の位置から1cmも進みません。ぐぬぬ。

径75mmオーガで下穴を拡張します
昨日と同じ深度にしか下がりません

井戸底はどうなってるの? 突き棒2号を降ろして、井戸底を探ってみましょう。
そう、井戸の掘り始めは道具も僅かで、突き棒の感触だけが頼りでした。道具を揃えたことでいつの間にか、力技になっていましたね。

突き棒2号で井戸底を探ります

判りました。井戸底の半分以上を、壁から飛び出た石が塞いでいます。一段下がって別の石が1〜2個並んでいます。チゼルはこの石の間に突き刺さるのでしょう。更にもう一段低くなって、穴が空いてます。たぶんこれがマグマライザーの下穴です。


感想と構想


井戸底の様子が判りました。石が並んでいるだけです。ただ、今迄より大型で井戸壁から飛び出しています。
いつもなら、チゼルをガンガン打ち込めば良いだけなのですが…。チゼルが突き刺さって回収不能になるのが怖い。
そうだ、あれ使ってみよ。戦局転換の秘密兵器、アースクラッシャー初号機の鎚型ヘッドです。あれなら、井戸底へ突き刺さる心配などナッシングです。

鎚型ヘッドを取り出してみると、作り掛けです。ボルトが長すぎます。長さ90mmでは、井戸底まで入りません。ぐぬぬ。
思い出してみると、当時、チゼルを銜えるチャック製作に興味が移っていて、最終加工をうっちゃってましたね。仕方ない、もう薄暗い井戸掘り現場でヤスリ掛けです。

持ち帰ってグラインダーを掛ければ一発で終了ですが、道具類は物置替りの自動車のトランクの中。そして、自動車は何故かこのタイミングで、修理工場にお預けです。もう、ヤダ!!

槌型ヘッドですが、ボルトが長過ぎます
30分掛けてボルトをヤスリで削り落としました


アルバム


2015年5月16日


上総掘り、資料探索中

本日の記録


朝一でホームセンターで資材購入。今日は一日中、雨で井戸掘りは中止です。


資材の購入


・9mm×30m トラックロープ 滑車引上用
・12mm×20m トラックロープ アースクラッシャー引き上用
・5mm×10m ポリエチレンロープ 保持ロープ用
・ゴム手 2セット
・ゴム付き軍手 徳用10セット

劣化したロープ類の交換用です。アンテナマストはまだ入荷していません。


調査と研究


上総掘りを調査するため、ネット古書店で注文していた2冊が届きました。
他にも色々資料を探索して勉強です。




「上総掘りの民俗 民俗技術論の課題」、大島暁雄、未来社、1986年1月
ネット古書店から購入しました。斜め読み中。



「井戸と水道の話」、堀越 正雄、論創社、1981年2月

こちらもネット古書店から購入しました。斜め読み中。



「上総堀り 伝統的井戸掘り工法 民俗文化財伝承・活用事業報告書」、千葉県立上総博物館友の会、千葉県教育委員会、2000年
千葉県で上総掘りの技術伝承を行っている団体の活動を元に、千葉県立上総博物館が発行した資料です。上総博物館は2008年に閉館したため、入手できませんでした。古書でも品薄のようです。千葉県の県立図書館に収蔵されていましたので、いつか訪問してみましょう。



「養老川下流域の上総掘り-「足踏み式」掘削法とその職人 -」、地引尚幸・菊地正明・仲井克己、帝京平成大学紀要 第18巻、2006年12月
著者の1名は元千葉県立上総博物館の研究員の方です。
著者の方のサイト e-office NAKAI にてネット公開されています。

【2016/4/13追記】
サーバーが見つからず、デットリンクになっています。インターネット・アーカイブから参照ください。



「帝京平成大学上総掘りプロジェクト」、菊地正明・地引尚幸・仲井克己、帝京平成大学紀要 第18巻、2006年12月
著者の方のサイト e-office NAKAI にてネット公開されています。


【2016/4/13追記】
サーバーが見つからず、デットリンクになっています。インターネット・アーカイブから参照ください。



『養老川上流域の上総掘り』、地引尚幸・菊地正明・仲井克己、帝京平成大学紀要 第19巻,2008年3月

帝京平成大学の紀要はCiNiiにオープンアクセスで収蔵されていますが、15巻までしかありません。



「帝京平成大学上総掘りプロジェクトⅡ-神崎稲荷神社での上総掘り」、菊地正明・地引尚幸・宇野義雄・仲井克己、帝京平成大学紀要 第19巻,2008年3月
帝京平成大学の紀要はCiNiiにオープンアクセスで収蔵されていますが、15巻までしかありません。



「帝京平成大学上総掘りプロジェクトⅢ--上総掘り工法の考察と応用」、菊地 正明・地引 尚幸・宇野 義雄・他、帝京平成大学紀要 第20巻2号,2009年3月
帝京平成大学の紀要はCiNiiにオープンアクセスで収蔵されていますが、15巻までしかありません。

帝京平成大学には一時期、上総掘りをテーマにした研究員がいたようです。


投稿日 2015年5月15日金曜日

やっぱり、岩盤ではなかったす

本日の記録


作業時間 9:30〜18:30
掘削記録 20cm(深度1,765cm) 10cm分は下穴のみです
開始水位 535cm(水深1,215cm)

今日も有休取ったった。まあ、毎年捨ててますから、今年は有給を有効に使わせてもらいましょう。朝一で私用を片付け、井戸掘りへGo!!

当地は先日の台風6号で、結構な降雨がありましたが、井戸の水位は変わりません。掘削中の井戸の水は、雨水が単に溜まった絞り水ではない様です。


道具と材料


・オーガ本体+延長パイプ×9+短尺90cmパイプ=1,800cm
・突き棒2号+塩ビHIVP25×200×9=1,970cm
・ポンプ式井戸掘り器
・チゼル型アースクラッシャー
・ブルポイント型アースクラッシャー
・マグマライザー


掘削の状況


先週の掘りクズを浚います。結構な量が沈殿していました。
岩盤に衝突して小型チゼルで砕いてましたが、それらしい岩屑は揚がってきません。

先週の掘りクズを浚います、粘土状です
岩盤を砕いているはずですが、揚がるのは僅かな砂利です

先週に引き続き、小型チゼルで岩盤を砕きます。
1時間程、動滑車と手打ちで打ち込みましたが、チゼルは2cmしか下がりません。手強いです。

幅50mmチゼル、出撃です
50mmチゼルは、2cmしか下がりません

刃先の鋭いブルポイントに換装です。これで掘れなければ、別の手段を考え出さないと無理です。
30分間程、動滑車で打ち込みましたが、2cmしか下がりません。ぐぬぬ。

ブルポイント、出撃です
ブルポイントも、2cmしか下がりません

打ち込みに飽きたので、井戸底を浚ってみました。
何故か粗砂が揚がってきました。岩屑はやはり揚がってきません。
井戸底の掘削は進んでいませんので、粗砂が揚がるのは変です。最初は「上部の井戸壁が崩れたのかな?」、と思いましたが、最近は壁が崩れることはなかったですね。

むむ、もしかして、もしかして。井戸底は岩盤じゃないのでは?
井戸底のサンプルが取れれば、はっきりするのですが…。あれでやってみよう!!

チゼルとブルポイントを打ち込み後、
井戸底を浚います 
何故か粗砂が揚がってきます

マグマライザーで井戸底のサンプルを採取してみます。試掘してみれば、先端の三角錐に付着してくる「モノ」で井戸底の様子が判るはずです。マグマライザーなら、砂岩質の岩盤でも少々は削れるでしょう。

マグマライザーを降ろすと、なんと井戸底に刺さります。最初は岩盤の隙間かと思いましたが、違いますね。井戸底は岩盤じゃない。回転させるとバッキン、バッキンと石を砕く感触があります。
1時間掛けて、20cm分の下穴を掘り下げることができました。

マグマライザー、着底しました
マグマライザーで20cm掘り下げました、
岩盤ではないです
マグマライザー、帰投しました

径50mmオーガで下穴を拡張します。
下穴20cmのうち、10cm分を掘り下げると石に衝突しました。オーガを引上げると簡単に上がります。石に食い込みません。

径50mmオーガで下穴を拡張します
径50mmオーガ、着底しました
径50mmオーガは下穴20cmのうち、
10cm分で動かなくなりました

次に径75mmオーガで下穴を拡張します。
こちらも10cm分しか掘り下げられません。オーガを回転させるとガラガラと石を掻き回す感触がします。砂利ではなく、大型の石の層なのでしょうか?
道具が壊れるので、無理はできません。

径75mmオーガ、着底しました
径75mmオーガは10cmしか下がりません
径75mmオーガ、帰投しました

掘りクズを浚います。もう仕事仕舞いの時間ですが、地下の様子を見てみたいです。どんな石が邪魔をしているのでしょうか?
井戸底はすり鉢状に下穴が残っているため、ポンプ式井戸掘り器を強く突くと先端のソケットが引っ掛かります。こんな時間に井戸底に食い込んで回収不能になっては困ります。慎重に底を浚います。
井戸底から揚がってきたのは粗砂です、砂利は揚がってきません。砂利はすり鉢の下に落ち込んでいて、揚がって来ないようです。
パイプの上部に沈殿している粘土は白っぽいです。今まではなかったですね。


下穴を拡張した10cm分を浚ってみました
砂利が揚がるはずですが、さっぱりです


感想と構想


マグマライザーに付着してきたのは、灰白色の砂混じりの粘土です。以前の粘土混じりの砂利層では、黄褐色の粘土がベットリと付着してきました。今回は粘土分は少ないです。
つまり、硬い土層は恐れていた岩盤ではなく、締まった砂利と粗砂の層ですね。チゼルとブルポイントを撥ね退けるほど、強固に団結しているようです。

マグマライザーに付着しているのは灰白色の粘土と砂です

ロープの類にガタが来ています。予防交換が必要です。ワイヤーロープは直ぐに交換しました。トラックロープは明日、買出しです。

危険、引き上げロープを繋ぐワイヤーが破断し始めてます
危険、引き上げロープのリングも摩滅してました


アルバム


2015年5月15日


投稿日 2015年5月14日木曜日

上総掘りの進化系

調査と研究


上総掘りは千葉県上総地区を中心に成立した削井方法です。上総地区の地層に合わせて、削井を安全に、早く、安く行うことを目的に発展した技術です。そして、その後は日本全国に広がり、温泉掘削、石油掘削、探鉱などにも利用されました。機械化により現在では廃れてしまった技術ですが、資材の少ない開発途上国向けに技術支援をされている団体もあるそうです。

ここで注目点は「上総地区の地層に合わせて」という部分です。専門的な生成理由とかは説明できませんが、上総地区は削井にあたり、岩盤が少ない地区だそうです。不幸にも岩盤に当ってしまった場合は、場所を変えて掘削し直しとか。

という事は、岩盤の打ち抜き方法を、元祖上総掘りに求めても無理だということが判りました。
でも、探せばあるものです。上総掘りの進化系です。

◆別府地区で進化した別府式上総掘りの紹介です。
別府市 > 教育・文化・スポーツ・人権 > 別府の湯けむり景観 > 文化的景観 別府の湯けむり景観保存計画
第5章 温泉・湯けむりの民俗学的概要
https://www.city.beppu.oita.jp/pdf/gakusyuu/bunkazai/yukemuri_keikan/02_05.pdf

◆海外への井戸掘り支援で進化した上総掘りの紹介です。
INTERNATIONAL WATER PROJECT (IWP) > 新方式(大野式)上総掘り  ←のキャッシュです


いずれも、鏨(タガネ)や鉄棒を使って岩盤を掘り抜く掘削方法です。

上総掘りのサイトを読んで、「一文字の先輪の掘り鉄管」を製作しようかと、心が動きましたが…。チゼルやブルポイントで岩盤に挑むのが、正しいアプローチだと確信しました。

H17のビットで井戸底を砕いています(撮影:2015/4/12)

井戸掘りのブログを検索して読み続けていますが、記事の掘削方法がそのまま使えることはありませんでした。理由は簡単。地下の様子が、皆違うからです。特に今回の現場の様にN値50超えで頑張っている方は、まだ見つかっていません。岩盤を掘り抜いた方がいれば、是非お話を伺いたいです。

上総掘りは、それ自体が完成された人力掘削方法です。勉強して損は無いですし、自分の井戸掘りに役立つヒントがたくさんありそうです。晴掘雨読です。


投稿日 2015年5月13日水曜日

上総掘り、研究中

調査と研究


国指定文化財等データベース から引用します。

名称:上総掘りの技術

ふりがな:かずさぼりのぎじゅつ
上総掘りの技術
(出典:国指定文化財等データベース)

上総掘りの技術
(出典:国指定文化財等データベース)

種別1:民俗技術

種別2:生産・生業

その他参考となるべき事項:※上総掘りに関する用具類は、昭和35年(平成7年追加指定)に重要有形民俗文化財に指定された「上総掘りの用具」
(258点)の一部を構成している。

指定証書番号:414

指定年月日:2006.03.15(平成18.03.15)

追加年月日:

指定基準1:(二)技術の変遷の過程を示すもの

指定基準2:(三)地域的特色を示すもの

指定基準3:

所在都道府県:千葉県

所在地:千葉県上総地方

保護団体名:上総掘り技術伝承研究会

解説文:上総掘りの技術は、千葉県の上総地方で考案された掘り抜き井戸の掘削技術で、細長い鉄管とそれを地中の孔に吊す竹製のヒゴを基本的な用具とし、用具の自重を利用しながら専ら人力を頼りに地下を掘り進み、帯水層にある地下水を掘り当てる技術である。
 上総掘りは、鑿を先端に付けた鉄管と割竹製の帯状のヒゴを使用し、人力のみで地面を突いて細い竪穴を掘っていくものである。水を含む層はシキといい、このシキ層の見分けも重要な技術であり、掘屑に混じる砂の色や含水性をみて水の良否や帯水量を判断する。掘削進度は、個人差があるが、一日に約三間(約五・四メートル)程度といわれている。

詳細解説:
 上総掘りの技術は、千葉県上総地方で考案された掘り抜き井戸の掘削技術で、細長い鉄管とそれを地中の孔に吊す竹製のヒゴを基本的な用具とし、用具の自重を利用しながら専ら人力を頼りに地下を掘り進み、帯水層にある地下水を掘り当てる技術である。
 この技術は、上総地方の職人によって日本の各地に広められたことから、一般に上総掘りと呼ばれており、道具立てと技術の習得の容易さから、従来の掘り抜き井戸の掘削技術に代わって短期間のうちに広く普及した。
 上総地方は、豊富な地下水を有する関東地下水盆の東南部に位置し、地層的にも岩盤を含まない比較的掘りやすい地質構造であるが、河岸段丘が発達した地形によって耕地と流水面との高低差が著しく、十分な灌漑用水が得られなかったため、慢性的な農業用水の不足に悩まされてきた。こうした自然の制約を克服し、地下水を取水、利用する技術として考案されたのが上総掘りである。この技術の成立背景には、当地方の人たちの水田作りや農業経営の安定化への強い願いがあり、この技術を習得した一般の農民層から、経験を積んで技術を習得した者たちがしだいに専業の職人となって輩出し、各地に赴いて井戸の掘削に活躍した。
 上総地方では、昭和30年代半ば頃まで、小糸川や小櫃川をはじめ、湊川、養老川など上総地方の主要河川の流域で、井戸掘りを専業とする職人たちが活動しており、数多くの灌漑用や飲料用の井戸が設けられた。近代的な水道の発達やボーリング技術が発展、普及するに伴い、上総掘りはしだいに衰退を余儀なくされたが、小資本で簡便な地下水の掘削には今日でもその技術が活用されている。
 上総掘り成立以前の掘り抜き井戸の掘削技術は、高い櫓を組み、長くて重い鉄棒を梃子などを使って引き上げた後に急激に落下させ、その重量の衝撃で地面を突き抜くという方法であった。この鉄棒を用いた井戸の突掘り技術は、江戸時代に関西地方で盛んに用いられていた技術であり、江戸時代後期には江戸を経由して上総地方にも伝えられた。しかし、この方法は多くの労力と日数を必要とし、掘削できる深度も20間(約36㍍)程度と浅く、また、鉄棒の落下に伴う事故が頻繁に生じるなどの欠陥があった。そこで、鉄棒に代えて軽量の樫棒を利用する突掘り技術が考案され、さらに、こうした従来の技術に改良を加えて考案されたのが上総掘りである。
 上総掘りは、鑿を先端に付けた鉄管と割竹製の帯状のヒゴを使用し、人力のみで地面を突いて細い竪穴を掘っていくものである。鉄管は、ホリテッカン(掘り鉄管)と呼ばれ、長さ6~8㍍、径9~2寸ほどの細長い鉄管を加工したものである。
 ホリテッカンの先には、サキワと呼ばれる円筒形の鉄製の鑿が付けられ、反対側にはヒゴが接続される。このヒゴの部分に付けられたシュモクと呼ばれる取っ手を握り、ホリテッカンを突き下ろす動作を繰り返し、孔底を突き崩しながら掘り進んでいく。
 ヒゴは孟宗竹を幅2㎝ほどに割ったもので、掘り進む深度に合わせて次々と繋いで延長していく。掘削時にはネバミズと呼ばれる粘土水を孔に注ぎ入れ、地面を柔らかくして掘削時の鑿先の熱を冷やしたり、掘屑を溶かしてその回収を容易にするとともに、孔壁に吸着させて崩壊を防ぐ。
 ホリテッカン先端の内部には、コシタと呼ばれる弁が装着されている。鉄管を突き下ろすとこのコシタの弁が開き、作業中に生じる掘屑が管内に回収される。掘屑がいっぱいになると、ヒゴを巻き上げて鉄管内の掘屑を地上に排出させるとともに、ホリテッカンをスイコと呼ばれるトタン製の筒に代えて孔中に溜まった掘屑を浚い出す。
 この作業を繰り返しながら、目的の帯水層まで掘り進んでいく。水を含む層はシキといい、このシキ層の見分けも重要な技術であり、掘屑に混じる砂の色や含水性をみて水の良否や帯水量を判断する。掘削進度は、個人差があるが、1日に約3間(約5.41㍍)程度といわれている。
 このような掘削方法は、一見単調にみえるが、掘り進む地質によってさまざな技術が使い分けられている。固い地層や礫層を掘る場合は、サキワの種類を輪一や一文字と呼ばれる横刃を付けた鑿に付け替えたり、タタキボリと称して鉄管を孔底に強く打ちつける方法が用いられ、砂地を掘る場合は、孔底に鉄管が突き当たる直前に突き上げ、孔中で砂を煽るように掘るスクイボリと呼ばれる方法が採られるなど、微妙な加減を必要とする手掘りならではの独特な技術がみられる。
 また、掘削作業の労力を軽減するため、ハネギと呼ばれる竹にヒゴを連結してその弾力を利用するとともに、鉄管やスイコを引き上げたり、孔中に下ろすときには、ヒゴグルマと呼ばれるヒゴを巻き取る車輪状の木枠を用いる。
 この技術は、日常生活を支えた伝統的な掘削技術として高く評価できるとともに、近代的な掘削に関する機械技術導入の基盤形成に寄与した民俗技術としても貴重であり、我が国の掘削技術の変遷を考えるうえで重要である。



その他、参考にしたサイトです。

◆千葉県袖ケ浦市郷土資料館から情報提供されて公開されています。
日本伝統文化振興機構(JTCO) > 民俗技術 > 上総掘りの技術
http://www.jtco.or.jp/japanese-culture/?act=detail&id=103&p=0&c=23

◆バーチャル博物館です。
千葉県市原市姉ヶ崎郷土資料館 > 展示場 > 上総掘り
https://www.ne.jp/asahi/anesaki/ichihara/tenji/tenjijyou.htm

◆神奈川県箱根地区の温泉掘削で使用された技術の紹介です。
神奈川県温泉地学研究所 > 温泉を知ろう > IV-4 温泉の掘削
https://www.onken.odawara.kanagawa.jp/modules/study/index.php/content0025.html

◆大分県別府地区の温泉掘削で使用された技術の紹介です。
別府温泉地球博物館 > 別府温泉事典 > 上総掘り
http://www.beppumuseum.jp/jiten/kazusabori.html



いくつかのサイトを参照しましたが、上総掘りは岩盤を掘り抜くのが得意な工法ではないようです。それでも、固い地層に衝突した場合は、先端に一文字と呼ばれる刃先を付けて掘削するとのこと。これはチゼルと同じですね。
岩盤に対して、アースクラッシャー+チゼルとブルポイントのアプローチは間違っていないようです。鉛ペレットを追加して、重量アップを計画します。

鉛ペレットなら売るほどあります(撮影:215/1/31)

掘り鉄管の仕組み等は参考になりました。爪とか先輪ですね。
結局、曽我部式の井戸掘り器は、掘り鉄管の構造を簡略化して塩ビで作成し、持ち手の竹ヒゴをそれ以前の樫棒に戻して、これも塩ビで作成したということですね。

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